相続登記義務化|しないとどうなる?2024年4月からの改正をわかりやすく説明

相続登記義務化|しないとどうなるの?

土地や建物などの不動産を相続すると「相続登記」が必要となります。

相続登記はこれまで義務ではありませんでしたが、2024年4月からは相続登記義務化が施行されるため、場合によってはペナルティなどが発生します。

そこで今回は相続登記義務化について改正点の6つのポイントや、相続登記をしないとどうなるのかについてわかりやすく解説します。

 

このコラムのポイント
  • まずは相続登記とはなにか、相続登記をしないとどうなるのかについて解説します。
  • 2024年4月1日から施行される相続登記義務化について改正点のポイントをわかりやすく解説します。
  • 相続登記義務化以降、相続登記をしないとどうなるのかについてもお伝えします。

 

相続登記とは

そもそも相続登記とは?

相続登記とは、相続した土地や建物などの不動産について、被相続人(亡くなった人)の名義から相続人(相続した人)の名義へ変更することです。

不動産の名義は相続したからと言って自動的に変更されるわけではなく、法務局へ申請して変更しなければなりません。

〇「相続登記」とは、何ですか?

〇相続した土地・建物について、不動産登記簿の名義を変更することです。

引用:法務省HP『不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~』資料より

 

相続登記をしないとどうなる?

相続登記をしないとどうなるの?

では相続登記をしないとどうなるのでしょうか?

答えは「たくさんのリスクやデメリットが生じる」です。

また、これまでは相続登記をしていなくても特別なペナルティなどはありませんでしたが、2024年4月1日からは「相続登記義務化」が施行され、相続登記をしないと罰則の対象となってしまいます。

相続登記義務化の内容については後程「不動産登記義務化|6つのポイント」の項目でご説明するので、そちらもご参考にしてください。

相続登記をしない場合のリスクやデメリットは次の通りです。

 

しないとどうなる?① 不動産を売却・活用できない

 

相続登記をしないと不動産を売却できないというデメリットがあります。

土地や建物などの不動産の売却は、その不動産の名義人しか行うことができません。

通常、不動産の売買では代金の決済と同時にその不動産の所有権移転の登記も行います。

ところが現在の所有者と登記簿上の名義人が一致していない場合、手続きをスムーズに進められません。

相続登記をきちんと行っていない不動産はそもそも信用度が低くなるため、買い手も決まりにくくなります。

これらは相続した不動産を駐車場やアパート経営などで活用したい場合にも同じことが言えます。

 

しないとどうなる?② 不動産を担保提供できない

 

不動産を担保にお金を借りる場合は、自分名義の不動産でなければ担保提供することができません

不動産を担保に借り入れを行う場合は金融機関が抵当権の設定登記を行いますが、その際は金融機関と登記簿上の所有者(名義人)によって行われ、登記事項も詳しく審査されます。

担保提供したい不動産の名義人が被相続人(亡くなった方)のままであれば借入する本人とは異なるため、当然担保提供はできないというわけです。

 

しないとどうなる?③ 相続人が増え子孫の手間が増える

 

万が一、不動産を相続した人(相続人)が相続登記をしないまま死亡してしまういわゆる「二次相続」や「数次相続」となった場合、相続人の数が膨大に増えるリスクがあります。

このように権利関係が複雑になると相続人の把握から行わなければならず、その後も何回もの登記や手続きが発生し、残された子孫の手間や労力も膨大に増えてしまいます。

 

しないとどうなる?④ 不動産を差し押さえられる可能性がある

 

相続登記をしないまま相続税の申告や納税を怠っていた場合や、相続人の中に借金のある人がいる場合は、不動産を差し押さえられる可能性があります。

特に借金のある相続人が返済を滞納した場合、債権者は借金をしている相続人の法定相続分が差し押さえられてしまいます。

こうなると、その後の手続きが煩雑になってしまうため注意が必要です。

 

しないとどうなる?⑤ 賃料をもらえない可能性がある(賃貸物件)

 

相続した不動産が賃貸物件の場合、相続登記をしないままだと賃料がもらえない可能性がでてきます。

なぜなら賃貸借契約は相続人に引き継がれるものの、賃料の請求権は異なるためです。

というのも、支払先が変更したという通知だけでは住人に家賃の二重払いのリスクが生じるため、住人は物件の登記簿上の所有者に対してのみ賃料を支払えばよいことになっているのです。

相続した賃貸物件の住人へ家賃を請求するには、相続登記を行って物件の名義を自分にしておく必要があります。

 

2024年4月1日から「不動産登記義務化」施行!

2024年4月1日から不動産登記義務化が施行される

先でも少しお伝えしたようにこれまで相続登記は義務化されておらず、登記をしない場合にリスクやデメリットはあるものの、罰金などのペナルティは課されませんでした。

しかし2024年4月1日から「不動産登記義務化」が施行されため、相続登記は義務化されます。

 

なぜ義務化に?

 

相続登記義務化の背景には、所有者不明土地が増加しているという問題があります。

所有者不明土地とは、「不動産登記簿等を参照しても所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」のことです。

 

所有者不明土地とは
相続登記がされないこと等により、以下のいずれかの状態となっている土地を「所有者不明土地」といいます。
① 不動産登記簿等を参照しても、所有者が直ちに判明しない土地
② 所有者が判明しても、所有者に連絡がつかない土地

引用:国土交通省『所有者不明土地ガイドブック~迷子の土地を出さないために!~令和4(2022)年3月』より

 

人口減少や少子高齢化が進んでいる今、多くの家や土地が相続後放置された状態になっており、今後も所有者不明土地は増えると懸念されています。

所有者不明土地が増加することによる問題点は大きく分けて次の二点です。

 

  • 土地の活用ができな(売買、開発)
  • 土地の管理ができない(周辺地域への悪影響)

 

こうした問題点を解消していくには不動産の所有者を明確にしておかなければならず、相続登記義務化が施行されることになりました。

 

>関連コラム 【空き家対策特別措置法】の改正についてわかりやすく解説!【特措法】

 

不動産登記義務化|6つのポイント

不動産登記義務化の改正のポイント

不動産登記義務化による改正点のポイントとして、次の6つが挙げられます。

 

不動産登記義務化ポイント①:相続を知った日から3年以内の相続登記が義務化

 

2024年4月1日より相続登記が義務化されましたが、その期限は「相続を知った日または相続が開始した日から3年以内」となっています。

遺言などによって不動産の所有権を取得した場合も同様です。

 

不動産登記義務化ポイント②:10万円の罰金が科される可能性がある

 

不動産登記の義務化が開始されて以降は、正当な理由がなく法務局から催促を受けたのに上記の登記義務を怠った場合、「10万円の罰金」が科される可能性があります。

 

正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処することとする。

引用:法務局『相続登記の申請の義務化と相続人申告登記について』資料より

 

正当な理由には、次の3つが挙げられます。

 

  1. 相続人が極めて多く、相続人の把握や諸手続きに多大な時間を要する
  2. 遺言の有効性・遺産の範囲等が争われている
  3. 申請義務のある相続人に事情がある(重病等)

 

なお、このうち1と2に該当する場合は、後述する「相続人申告登記」を行う必要があります。

 

不動産登記義務化ポイント③:過去の相続分も該当する

 

不動産登記の義務化は、過去に相続したものに関しても適用されます。

これらの相続登記の期限は、「義務化の施行日(2024年4月1日)または相続を知った日のいずれか遅いほうから3年以内」とされています。

ただし、相続を知った日から既に3年以上経過していた場合は、「義務化の施行日(2024年4月1日)を基準として3年以内(2027年4月1日まで)に行うこと」と定められています。

過去の相続分で相続登記をしていないものに関しては、2024年4月1日を過ぎて即座に罰金が科せられるわけではありません。

 

不動産登記義務化ポイント④:遺産分割後の相続登記も義務化

 

遺産分割協議が相続人の間でまとまる前に、いったん法定相続人が法定相続分で相続登記を行うことがあります。

その後遺産分割の話がまとまったら、遺産分割で取得した相続人は相続した不動産の相続登記を行わなければなりません。

この遺産分割による相続登記においても、「遺産分割の日から3年以内」に行うことが義務化されました。

 

不動産登記義務化ポイント⑤:「相続人申告登記制度」が新設

 

ポイント②でお伝えした相続登記が難しい正当な理由の①②に該当する場合などにおいて、「相続人申告登記制度」が新設されました。

相続人申告登記制度とは「自分が不動産の相続人である」旨を法務局に申請することで、正式な相続登記ではないものの義務を履行したことにしてもらえる制度です。

たとえば遺産分割協議が終わっていない場合、相続人申告登記制度によって申請しておきます。

後に遺産分割協議で話がまとまり相続人が確定したら、確定した日から3年以内に正式に相続登記をすることで相続人は義務を履行したことになります。

 

不動産登記義務化ポイント⑥:一部の申請が簡略化

 

今回の改正では遺贈による名義変更について、それまでできなかった、不動産の遺贈を受ける人が単独で申請することが可能になります。

遺贈とは、被相続人(亡くなった方)の遺言に則って、遺産の一部または全部を法定相続人以外の者に受け継がせることです。

そのほかに、法定相続分による相続登記後に遺産分割によって名義変更登記をする場合も、不動産を取得した人が単独で申請することが可能になります。

 

不動産登記義務化以降に相続登記しないとどうなる?

不動産登記義務化以降に相続登記しないとどうなるの?

繰り返しになりますが、不動産相登記義務化が施行されて以降に相続登記をしないと10万円の罰金が科せられます。

その期限は相続を知った日または相続が開始した日から3年以内となっています。

また、過去に相続したものについても義務化の対象となるため、相続を知った日からどれくらい年数が経っているかに応じた基準に従って、期限内に相続登記を行わなければなりません。

ただし不動産登記義務化ポイント②でお伝えしたように、正当な理由がある場合は罰金の対象から除外されます。

その際は、理由によっては相続人申告登記を行わなければならないので注意が必要です。

 

まとめ

 

今回は不動産登記義務化についてわかりやすく解説しました。

相続登記を行わなければ様々なリスクやデメリットがあるだけでなく、今回の義務化によって施行以降は罰金も科せられてしまいます。

「相続した実家を売却したい」「税金対策として土地活用したい」といった場合にも、名義人が誰であるかが重要になってきます。

土地や建物などの不動産を相続したら速やかに相続登記を行うようにしましょう。

 

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