アパート経営で節税できる税金の種類と方法|所得税から相続税まで一挙解説
>施工事例 APARTMENT
「アパート経営をすると節税効果がある」
「税金対策でアパート経営をはじめた」
このような話をよく耳にしませんか?
実際、アパート経営は節税効果の高い土地活用のひとつであり、上手に運営すると、資産形成と節税が同時に行える可能性のある方法でもあります。
そのためには税金について整理して理解しておく必要があります。
そこで今回の記事では、千葉県でアパートの企画・設計・施工から賃貸経営のサポートまで行っているIDQ architectが、「アパート経営で節税できる税金の種類と方法」について解説していきます。
このコラムのポイント |
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Contents
アパート経営にかかる税金と節約できる税金
まずはアパート経営においてどんな税金がかかってくるのか、その中で節税できるものはどれくらいあるのかを確認しておきましょう。
アパート経営にかかる税金の種類
アパート経営でかかる税金として、次の11種類が考えられます。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 固定資産税
- 都市計画税
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
- 相続税
- 贈与税
これらをわかりやすく分類すると、「アパート経営をはじめる際にかかる税金」「アパート経営中に継続的にかかる税金」「相続時にかかる税金」の3つに大きく分けられます。
また、その中の「アパート経営中に継続的にかかる税金」には、「土地や建物にかかる税金」と「不動産所得にかかる税金」とがあります。
土地や建物にかかる税金は、土地や建物の評価額によって算出されるため自動的に課税され、不動産所得にかかる税金は、確定申告をすることで課税されるという違いがあります。
節税が可能な税金とは
上記の11の税金の中で節税が可能なのは、「アパート経営中に継続的にかかる税金」と「相続時にかかる税金」です。
具体的には、「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」以外の8つということになります。
これらをまとめると、次のように整理できます。
アパート経営をはじめる際にかかる税金 |
アパート経営中に継続的にかかる税金 |
相続時にかかる税金 |
|||
税金名 | 節税の可否 | 税金名 | 節税の可否 | 税金名 | 節税の可否 |
不動産取得税
登録免許税 印紙税 |
× × × |
土地や建物にかかる税金 (自動的に課税される) |
相続税
贈与税 |
〇 〇 |
|
固定資産税
都市計画税 |
〇 〇 |
||||
不動産所得にかかる税金 (確定申告によって課税される) |
|||||
所得税
住民税 個人事業税(一定要件を満たした場合) 消費税(一定要件を満たした場合) |
〇 〇 〇 〇 |
このように、節税できる税金は意外とたくさんあります。
事業税と消費税については、一定条件を満たした場合に課税されます。
では次項より、節税方法を見ていきたいと思います。
アパート経営の節税法① 所得税の節税
所得税は給与所得なども含む個人の総所得に応じて課税される税金で、次の計算式で算出されます。
- 所得 × 累進課税率 - 控除額
所得税の税率は、所得が多くなるほど税率が高くなるいわゆる累進課税となっており、所得に応じた税率(5~45%)が適用されます。
アパート経営で所得税を節税する方法としては、次の5つが代表的です。
(1)経費をもれなく計上する
所得税は、家賃収入の金額にではなく、そこから必要経費を差し引いたものに対してかかります。
したがって計上できる経費にはどんなものがあるか、しっかりと把握してもれなく必要経費として計上することで所得税の節税につながります。
特に初年度は初期費用がたくさん掛かるため、必要経費の計上による節税は初年度に大きな効果をもたらします。
基本的にアパート経営に関する支出で支出金額が妥当なもの、証憑書類(領収書・レシートなど)があるものは計上できると考えるとよいでしょう。
反対に、私生活に関する支出や不動産投資ローン(アパートローン)の元本部分などは計上できないので注意が必要です。
以下に経費として計上できるものの例と計上できないものの例を挙げるので、ご参考にしてください。
【計上できるものの例】
計上できるもの | 例 |
減価償却費 | 経年劣化により生じる資産価値の減少分 |
借入金利息 | 不動産投資ローン(アパートローン)の利息部分 |
租税公課 | 固定資産税・都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など |
管理費 | 管理を委託している場合の管理委託費 |
保険料 | 火災保険、地震保険、損害保険などの費用 |
修繕費 | 共有部修繕費、退去時リフォーム費など |
修繕積立金 | 大規模修繕のための積立金 |
支払手数料 | 弁護士、税理士、司法書士などへの報酬 |
広告宣伝費 | 入居者募集に関する広告費 |
給与 | 青色事業専従者への給与 |
雑費 | 交通費、書籍代、通信費、交際接待費、消耗品費など |
【計上できないものの例】
計上できないもの | 例 |
借入金 | 不動産投資ローン(アパートローン)の元本部分 |
私生活に関する支出 | プライベートで使った費用 |
所得に対する税 | 所得税、住民税、法人税など |
この中でも減価償却費は、構造によって決められた耐用年数に応じて毎年計上することができます。
減価償却は実際の支出を伴わないこともあって節税効果が大きいと言われており、次にお伝えする損益通算でもポイントとなります。
(2)損益通算を行う
給与所得と不動産所得とがある場合、給与所得と不動産所得を「損益通算」することで節税ができます。
アパート経営における損益通算とは、給与所得の利益と不動産所得の損益(赤字部分)を相殺でき、所得税の課税対象を減らすことができる仕組みのことです。
たとえば年間800万円の給与所得があり、アパート経営で200万円の損失が計上されている場合、損益通算で赤字部分を相殺することで課税対象となる総所得は600万円となる、というわけです。
また、アパート経営が赤字でなくとも減価償却費を計上することで、お金を支払うことなく手元に残したまま損益通算ができます。
(3)青色申告を行う
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。
申告方法 | 特徴 | |
白色申告 | 事前の手続きは不要。
簡易簿記のため記帳が簡単だが節税効果は低い。 |
|
青色申告 | 事前手続きが必要。(税務署への「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出)
帳簿や書類の作成に手間がかかるが節税効果が高い。 |
アパート経営によって不動産所得がある場合、青色申告を行うことで次のような節税効果が得られます。
①青色申告特別控除を受けられる
青色申告の場合、総所得金額から最大で65万円の控除が受けられます。(事業的規模でない場合は10万円)
②青色事業専従者給与を経費として計上できる
青色事業専従者とは青色申告を行う事業主の下で働く家族従業員(配偶者や15歳以上の親族)のことで、青色事業専従者に支払う給与を青色事業専従者給与といいます。
青色申告では青色事業専従者給与を経費として計上することができ、課税対象となる所得額を減らすことができます。
③赤字の繰り越し(純損失の繰り越しと繰り戻し)
青色申告では赤字(純損失)を最大3年まで繰り越すこと、そして黒字になった年に繰り戻すことができます。
赤字の際に繰り越すことで、黒字となった年の所得税の課税対象額を減らすことができます。
④貸倒引当金が計上できる
貸倒引当金とは、将来予測される貸倒れ(債権回収が不可能となる)に備えて、あらかじめ損失額を予測して計上する引当金のことです。
青色申告の場合、このように経費として計上できる科目が増えます。
(4)法人化も検討
法人化とは、会社を設立して法人名義でアパート経営を行うことです。
アパート経営による収益が増えてきたら、法人化することでより節税効果が高くなります。
一般的に、アパート経営の収益が1,000万円を超えたら法人化のタイミングと言われています。
なぜなら前述の通り、個人にかかる所得税は累進課税のため所得が増えるほど税率も高くなり、所得が1,000万円を超えると税率がぐっと高くなるためです。
課税対象となる所得額に対しては、所得税だけでなく住民税もかかりますが、住民税はおおむね一律10%の税率となっており、所得額に応じて税率が変わることはありません。
所得額による個人の所得税の税率は次のとおりです。
課税対象となる所得額 | 税率(所得税) | 税率(住民税) |
195万円以下 | 5% | 10% |
195万円超330万円以下 | 10% | 10% |
330万円超695万円以下 | 20% | 10% |
695万円超900万円以下 | 23% | 10% |
900万円超1800万円以下 | 33% | 10% |
1800万円超4000万円以下 | 40% | 10% |
4000万円超 | 45% | 10% |
たとえば目安となる1,000万円が該当する「900万円超1,800万円以下」で見た場合、所得税率33%+住民税率10%=43%の税金がかかることになります。
法人化した場合、資本金1億円以下の法人に対する同内容の税率はおおむね31~35%程度であるため、法人化した方が節税できる、というわけです。
なお、法人化する場合は節税以外にもメリットとデメリットがいくつかあるため、税理士に相談して決めるとよいでしょう。
アパート経営の節税② 住民税の節税
住民税は、自身が住んでいる地域に納める税金のことです。
前項でお伝えしたように、住民税の税率は所得の多い少ないに関係なく一律10%となっています。
もう少し具体的に言うと、住民税は次の式で算出されます。
- 所得割(所得に対して10%) + 均等割りの負担額(通常4,000円。2014~2023年の間は5,000円
したがってアパート経営の節税①でお伝えしたような、所得税の節税方法を行うことで住民税の節税につながります。
アパート経営の節税③ 個人事業税・消費税の節税
個人事業税は法定業種(不動産貸付業、駐車場業など)を営んでいて、前年度の事業所得が290万円を超える人にかかる税金です。
個人事業税の金額は次の式で算出されます。
- 個人事業税=( 所得(収益)) - 290万円)× 税率5%
この場合も、所得税や住民税の節税方法と同様に経費の計上などを行うことで節税につながるでしょう。
また、消費税は課税業者となった場合にかかる税金です。
一般的に、課税売上額が1,000万円を越えると課税業者になるといわれていますが、アパート経営などは「住居の貸付」にあたり、原則として消費税は非課税となります。
したがってアパート経営で課税業者となるケースは住居貸付以外の収入が1,000万円を超えるような事業的な規模となることがほとんどです。
一般的なアパート経営に関する節税についてお伝えしているため、ここでは割愛します。
アパート経営の節税④ 固定資産税・都市計画税の節税
固定資産税とは、土地や家屋などの不動産を所有している人にかかる税金で、次の式で算出されます。
- 固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%
これはアパートなどの投資用不動産だけでなく居住用の不動産に対してもかかります。
都市計画税とは、通常土地や家屋などの不動産を「都市計画法による市街化区域」内に所有している人にかかる税金で、次の式で算出されます。
- 都市計画税 = 課税標準額 × 0.3%
固定資産税や都市計画税は「住宅用地の特例」という特例措置を受けることで節税が可能です。
「住宅用地の特例」とは、住宅用地にかかる固定資産税が最大1/6、都市計画税が最大1/3まで軽減されるというものです。
軽減幅は、「小規模住宅用地」か「一般住宅用地」かによって異なります。
それぞれの計算式は次の通りです。
【小規模住宅用地】:住宅やアパート用の敷地で戸数×200平米までの部分
- 固定資産税 = (課税標準額 × 1/6)× 1.4%
- 都市計画税 = (課税標準額 × 1/3)× 0.3%
【一般住宅用地】:住宅やアパート用の敷地で小規模住宅用地以外の土地
- 固定資産税 = (課税標準額 × 1/3)× 1.4%
- 都市計画税 = (課税標準額 × 2/3)× 0.3%
アパートの場合「戸数×200平米」以下の部分が小規模住宅用地となるため、大幅な固定資産税の節税が期待できます。
>参考リンク 国土交通省『土地の保有に係る税制
アパート経営の節税⑤ 相続税の節税
相続税とは、相続等により不動産などの財産を取得した際に、その取得した財産にかかる税金のことです。
アパート経営によって、相続時にかかる相続税も節税することが可能です。
(1)貸家建付地・貸家の評価額減による節税
アパートなどの賃貸物件を建てている土地と貸家建付地、アパート等の賃貸建物を貸家といいます。
貸家建付地や貸家は所有者が自由に利用できないことから相続税の評価額が下がるため、アパート経営を行うことで相続税の節税対策が期待できます。
貸家建付地の評価額を求めるのに必要な項目は次の通りです。
①自用地の評価額(路線価 × 面積)
②借地権割合(地域によって30%~90%)
③借家権割合(一律30%)
④賃貸割合(建物の全体に占める貸している部屋の床面積の割合)
これらを用いて、下の計算式で算出することができます。
- 貸家建付地の評価額 = ① ×( 1 - ② × ③ × ④ )
一方、貸家の評価額は次のように計算できます。
- 貸家の評価額 = 固定資産評価額 ×( 1 - ③ × ④ )
このように貸家建付地や貸家の場合は相続税の評価額が大幅に抑えられるため、更地等での相続と比較して、アパート経営など行うことで相続税の節税につながります。
(2)「小規模住宅用地の特例」による節税
小規模住宅用地の特例とは、「貸付事業用宅地等」「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」のいずれかに該当する土地の限度面積部分について、評価額が最大80%減額される優遇措置のことです。
区分 | 限度面積 | 減額割合 | |
貸付事業用宅地等 |
●被相続人の貸付事業用宅地 ●一定の法人の貸付事業以外の事業用宅地・貸付事業用の宅地 |
200㎡
200㎡ |
50%
50% |
特定居住用宅地等 | ●被相続人の居住用宅地 | 330㎡ | 80% |
特定事業用宅地等 | ●貸付事業以外の事業用宅地 | 400㎡ | 80% |
特定同族会社事業用宅地等 | ●一定の法人の貸付事業以外の事業用宅地 | 400㎡ | 80% |
アパート経営では貸付事業用宅地等として、賃貸建物が建っている土地の200平米までの部分について小規模宅地等の評価の特例が適用され、相続税の評価額が50%になります。(ピンク色部分)
相続に関しては
>参考リンク IDQ architec『相続対策としてのアパート建築のメリットとは?』
アパート経営の節税⑥ 贈与税の節税
贈与税とは、不動産などの財産をもらった際にその財産にかかる税金のことです。
贈与性にもいくつか節税する方法があります。
(1)評価額減による節税
贈与税も相続税と同様に貸家建付地・貸家とすることで課税評価額が下がるため、そのまま現金などで贈与するよりも節税が可能です。
(2)特例贈与財産(特例税率)の活用
財産の贈与を受けた時、通常は「暦年課税」によって贈与税が計算されます。
暦年課税の税率には「特例贈与財産用(特例税率)」と「一般贈与財産用(一般税率)」とがあり、財産を取得した者の年齢等によって適用されます。
- 特例贈与財産用(特例税率):父母や祖父母などの直系尊属が18歳以上の子供や孫などの直系卑属に贈与した財産にかかる税率
- 一般贈与財産用(一般税率):「特例贈与財産」に該当しない場合の財産にかかる税率
特例税率と一般税率では税率や控除額が異なるため、特例税率の要件を満たしている場合は節税につながります。
>参考リンク 国税庁『贈与税の計算と税率(暦年課税)』
いずれにしても生前贈与を行う場合は相続税との兼ね合いもあるため、税理士へ相談するなどし、よく検討して行うことをおすすめします。
まとめ
今回はアパート経営の節税に注目し、各税金の節税方法についてお伝えしました。
アパート経営を行うと様々な税金がかかりますが、正しい節税方法を知っておけば賢く経営することができます。
一方で、節税ばかりに目をむけるのではなく、長期的な安定経営を視野に入れて対策することもとても大切です。
「もっとアパート経営について知りたい」「アパート経営で相続対策を行いたい」等お考えの方は、土地活用や賃貸経営のプロに相談するのもおすすめです。
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