【空き家対策特別措置法】の改正についてわかりやすく解説!【特措法】
「実家を相続したが空き家のまま放置状態」
「空き家を有効活用したいがそのままになっている」
このように空き家を所有している方がぜひ把握しておきたい法律に「空き家対策措置法」があります。
この法律自体は2015年5月に制定されたものですが、実は2023年に改正されています。
今回は「空き家対策措置法」について内容と2023年の改正ポイントについてわかりやすく解説するとともに、所有している空き家が後ほどご説明する「特定空家」「管理不全空家」になるとどうなるのか、そしてそれらを防ぐ方法についてご説明します。
このコラムのポイント |
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Contents
空き家対策特別措置法とは
「空き家対策特別措置法」とは正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、通称「空き家法」と呼ばれることもあります。
空き家に関する初めての法律として2015年5月より完全施行されました。
人口減少などから空き家の増加問題が顕著になってきていましたが、それまでは空き家は個人の管理にゆだねられており、所有者の許可なく行政機関が関与して立ち入り調査等を行うことは認められていませんでした。
しかし「空き家対策特別措置法」が制定・施行されてからは、空き家の所有者に対して助言・指導・勧告・命令などが行える権限が、各自治体に与えられました。
具体例としては次のことが行えます。
- 空き家の立ち入り調査・情報利用
- 空き家の適切な管理に係る指導
- 空き家の活用に係る措置
- 空き家の跡地の活用促進
- 特定空家の指定
- 特定空家への助言・指導・勧告・命令
などの権限が与えられています。
ここで出てきた「空き家」と「特定空家」については、次項で説明します。
「空き家」の定義
そもそも「空き家」とはどのように定義づけられているのでしょうか。
「空き家対策特別措置法」の第二条一項において、次のように定められています。
(定義)
第二条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
したがって、通常人が住んだり使用したりされていない家屋はほぼ「空き家」としてみなされるということになります。
「特定空家」の定義
では「特定空家」とはどのように定義づけられているのでしょうか。
「空き家対策特別措置法」の第二条一項において、次のように定められています。
この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
つまり、下記のいずれかに該当する空き家が「特定空家」ということになります。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
たとえば建物が老朽化して崩れかかっている状態や、不用品で溢れかえったいわゆるゴミ屋敷と言われる状態、草が茫々で虫の温床になっている状態などが挙げられます。
空き家対策特別措置法は2023年に改正された
お伝えしたように2015年に「空き家対策特別措置法」が制定・施行されたものの、空き家問題はより深刻になっています。
上のグラフにある通り空き家の数は年々増えており、「その他の空き家」の数が349万戸と20年で約1.9倍に増加しています。
「その他の空き家」の数の将来推計については直近のトレンドによると、2025年(令和7年)で420万戸、2030年(令和12)で470万戸程度と推計されています。
従来の法律によって特定空家への対応を重点的に定めて取り組んではきましたが、空き家の数は着実に増加しています。
放置された空き家が増加すると次のような様々なリスクがあり、周辺地域にも迷惑が掛かります。
- 家屋の倒壊
- 外壁の落下
- ねずみ・害虫などの繁殖
- 景観の悪化
- 悪臭
- 不法侵入
- 枝のはみだし
そこで、空き家活用の拡大や管理の確保などが総合的にできるよう、「空き家対策特別措置法」は2023年に改正され、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を2023年6月14日に公布、2023年12月13日より施行されました。
では改正点のポイントを次項で分かりやすくご説明します。
空き家対策特別措置法の改正点
2023年の「空き家対策特別措置法」の改正点の主な柱は次の3つです。
- 空き家の活用の拡大
- 空き家の管理の確保
- 特定空家の除却
それぞれのポイントをみていきましょう。
1.空き家の活用の拡大
今回の「空き家対策特別措置法」の改正によって、空き家の活用が拡大されました。
これにより市区町村ができることが増え、従来は難しかった空き家の建て替えや用途変更をよりスムーズに進めることが可能になりました。
具体的には次のような内容となっています。
①空家活用の重点的実施
「空家等活用促進区域」を創設し、中心市街地などの空き地の用途変更や建替え等を促進します。
②所有者不在の空家の処分
所有者に代わって処分を行う財産管理人の選任を、市区町村が裁判所に請求することができます。
③自治体や所有者等へのサポート体制
「空家等管理活用支援法人」を創設し、市町村が空き家の活用や管理に取り組むNPO法人や社団法人を「空き家等管理活用支援法人」へ指定することが可能になりました。
これにより、空き家に関するノウハウを持ったNPO法人や社団法人によるサポートを所有者が受けやすくなります。
2.空き家の悪化の防止(管理の確保)
この改正では空き家が悪化するのを未然に防止するために市区町村ができることが増え、「管理不全空家」の新設などによって空き家の管理を確保できるようになりました。
具体的には次のような内容となっています。
①特定空家化の未然防止
放置すれば特定空家となるおそれのある空家を「管理不全空家」とし、市区町村が指導・勧告して特定空家となるのを防ぎます。
②管理不全建物管理制度の活用
所有者に代わって建物管理を行う「管理不全建物管理人」の選任を市区町村が裁判所に請求できます。
③所有者把握の円滑化
電力会社等にある所有者情報の提供を、市区町村が要請することができます。
3.特定空家への除却等の措置を円滑化
また、今回の「空き家対策特別措置法」の改正で、市町村が特定空家の除却などの措置を円滑に行えるようになりました。
除却とは固定資産を取り壊したり廃棄することで、具体的な内容は以下の通りです。
①代執行の円滑化
緊急代執行制度を創設し、緊急時は命令がなくても代執行が可能になりました。
また、代執行費用の徴収を円滑化しています。
②相続放棄、所有者不明・不在の空家への対応(管理不全空家、特定空家等)
市区町村が裁判所に「財産管理人」の選任を請求し、修繕や処分を実施できます。
③状態の把握
所有者への報告徴収権を市区町村に付与し、勧告・命令等を円滑化しています。
改正のポイントは「特定空家」と「管理不全空家」
今回の「空き家対策特別措置法」の改正のポイントは、「特定空家」と「管理不全空き家」にあります。
法の改正によって、特定空家に加えて管理不全空家も市区町村からの指導・勧告の対象となったてんが一番のポイントといえます。
「特定空家」になるとどうなる?
特定空き家に指定されると、市区町村からの助言・指導・勧告・命令・代執行といった措置の対象となります。
これらに従わなかった場合、次のようなペナルティが課せられます。
■特定空家に認定 → 市区町村からの助言や指導が行われる。
■勧告 → 助言や指導でも改善されない場合は勧告がなされ、空き家の建つ土地の「住宅用地特例」の対象から除外となる。
これにより、空き家が建っている土地の固定資産税額が増額になる。
■命令 → 勧告後も改善されない場合は命令がなされ、命令に従わない場合は最大50万円以下の過料に処される場合がある。
■代執行 → 最終的に代執行によって空き家が撤去され、解体費用は空き家の所有者に請求される。
勧告がなされた時点で「住宅用地特例」の対象から除外となるため、空き家が建っている土地の固定資産税額が増額になってしまいます。
「住宅用地特例」とは住宅用地に対する固定資産税や都市計画税が減税される特例措置のことで、内容は次の表のようになっています。
住宅用地特例 | ||
固定資産税課税評価額 | 都市計画税課税評価額 | |
200㎡以下の部分 (小規模住宅用地) | 1/6 | 1/3 |
200㎡超の部分 (一般住宅用地) | 1/3 | 2/3 |
勧告により「住宅用地特例」から除外されるとこれらが全く適用されなくなるため、税金の負担額が大きく増えることになります。
「管理不全空家」になるとどうなる?
「管理不全空家」とは、窓が割れていたり壁が破損しているなどのように管理が十分になされていない状態で、そのまま放置すれば特定空家になる恐れがある空き家のことを言います。
第十三条 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
一部繰り返しになりますが、今回の改正によって下記の点が変わっています。
- 国や市区町村が管理不全空き家等を設定することができるようになる。
- 特定空家に加えて管理不全空き家も市区町村からの指導・勧告の対象となる。
これらに従わなかった場合、特定空家と同様に次のペナルティが課せられます。
■管理不全空き家に認定 → 市区町村から指導が行われる。
■勧告 → 指導により改善されない場合は勧告がなされ、空き家の建つ土地の「住宅用地特例」の対象から除外となる。
これにより、空き家が建っている土地の固定資産税額が増額になる。
つまり、特定空家と同様に、空き家の建っている土地の固定資産税がの負担が大きく増えることになるのです。
特定空家・管理不全空き家になるのを防ぐ6つの方法
最後に特定空家や管理不全空き家に指定されるのを防ぐための方法を6つお伝えします。
これまでお伝えしたようなペナルティを避けるためにも、そして空き家があることで周辺地域へ迷惑をかけないためにも、空き家を所有している場合は「特定空家」や「管理不全空き家」になるのを防がなければなりません。
これらを防ぐ方法は次の6つが挙げられます。
- 適切に管理する
- 使用する
- 賃貸に出す
- 売却する
- 解体する
- 活用する
そもそも、空き家でも適切に管理されていれば特定空家や管理不全空き家に指定されません。
掃除や草刈り、換気をしに行くなどこまめに手を入れて適切に管理すれば、指定されるリスクは低くなります。
リフォームなどをして住んだり賃貸に出したりというように、何らかの形で空き家を使うのもよいでしょう。
賃貸に出せば活用という面でもメリットが得られます。
もしくは売却したり、解体して更地にしてしまう方法もあります。
更地のままだと税金が増額になるので、駐車場にしたり新たに建物を建てて土地活用するのもひとつです。
まとめ
今回は「空き家対策特別措置法」の改正についてわかりやすくまとめました。
今回の改正では従来までの法律ではカバーしきれなかった空き家の問題点を解決するために行われました。
空き家の活用を拡大するとともに、倒壊の恐れがある特定空家へのより円滑な対応、そして特定空家になるのを未然に防ぐための対策が盛り込まれています。
特に空き家の所有者にとっては、今回新設された「管理不全空き家」に指定されないよう対策を講じておくことがことがポイントです。
空き家を所有している場合はこれらへ指定されるのを防ぐため、上記に挙げたような方法を今一度見直し、対応していくことが望ましいといえます。
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